産業用VR向けPC(仕事で使うVRのマシンスペック)

現在のVRは主に、MetaQuest2等「スタンドアロンタイプ」と「PCと繋ぐVR」の2種類になります。

「スタンドアロンタイプ」は一般ゲーム用途に多く普及していますが、製品開発や産業用途のVRではモデルデータの量(ポリゴンの量)が多くなる事が多いため「PCと繋ぐVR」がより利用されています。

産業用途で使用するVRでは大きな設備などを原寸でチェックしたり、自動車や飛行機など工業製品のデザインを原寸で確認するなど、製品開発の中で使用するVRはVR化までのスピードと寸法の正確性が求められるため、ゲーム制作で使われるようなCGならではの技術でポリゴンを減らす工程は優先度が低いです。

そのためゲーム用の推奨スペックPCよりも少しハイスペックなPCを求められます。

VR READY

数年前まではVR対応PCには「VR READY」という認証シールが貼ってあったためわかりやすかったのですが、最近のPCではこのシールは貼られなくなり、あまり大きく取り上げられる事もなくなりました。

これはHTCとOculusが認証したVR用マシンについていたそうですが、近年グラボの性能が良くなったため、わざわざ謳われなくなったのかもしれません。

ただし「VR Ready」PCはゲーム用VR向けの推奨スペックが対象なのとシールが貼られた時期が古い場合がありますので産業用VR用途ではむしろ怪しんでスペックのチェックをしてください。

CPUとGPU

VR用PCの購入時に特に重要になるのはCPUとGPUです

CPUとGPUの働きは以下の特性があります。それのみの働きではなくお互いに協力しあいますので、比較的こちらの用途に多く使用されているという程度の認識で結構です

種類特徴利用される内容
CPUより複雑な計算に使用 
コア数:2~16
GPUの管理/エフェクト処理/物理演算
GPUよりシンプルで大量な計算に使用 
コア数:数千~18000
モニタへの描画/ポリゴン計算/ディープラーニング/レンダリング/レイトレーシング
CPUとGPUの働きの違い

上記のようにお互いに得意とする仕事が違います

GPUに注目しがちですが、CPUもちゃんと必要ですのでご注意ください。

VRの使用目的別PCスペック

基本的に最新のハイスペックゲーミングPCを購入していただくのが一番簡単ですが、中古や既存機種のバージョンアップなども検討する際の参考にしてください

ジャンル重要な要素特に注意したいスペック
販促用コンフィギュレーターマテリアル・テクスチャ処理が多いGPU:NVIDIA RTX2070以上
生産設備 機械検証(FA)パーツ数が膨大なためポリゴン数が多いGPU:NVIDIA RTX2070以上 
SSD:1TB
工業製品デザイン検証なめらかな表面のためポリゴン数が多い、マテリアルが複雑GPU:NVIDIA RTX3060Ti 以上
RAM:64GB以上
LED発光演出確認発光エフェクト、膨大なLEDの発光制御CPU:Core-i7 9世代以上 
GPU:NVIDIA RTX3060Ti以上
物理シミュレーター(物理演算)正確な物理計算、リアルな質感CPU:Core-i7 11世代以上 
GPU:NVIDIA RTX3080以上
業種・対象物によりデータ量やソフトの作り方が違いますのであくまでも参考例です

使用する目的によってCPUを意識したほうがいいかGPUを意識したほうがいいか、多少ではありますが差があります。

RAMとSSDの容量が少ないとCPUとGPUが力を発揮できなくなるので可能な限り多めに積んでください(RAM:32以上 SSD:512GB以上)

上記のGPUがすべてRTXなのはNVIDIAの「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)機能(要:ソフト側の対応)が大量のポリゴン処理に有利に働くケースがあるからです。

CPUはAMD製品でも同等スペックであれば大きな差は無いと思いますが、比較的複雑な計算に強いと噂されるIntelをおすすめしています。

GPUのスペックは各ゲーミングPCの販売会社様が提供しているスペック比較表(GPU 性能比較で検索)を参考にしてください

GPUの型番は数字が大きい方が新しい(パワフル)ですが下2ケタが50、60よりも70、80、90のほうがよりパワフルになります。

Quadro VS Geforce

製品開発に使用しているCAD用PCとしてQuadroを積んでいるPCをすでにお持ちのケースがあるかと思います。

OpenGLとDirectXで使用目的が違うという説明がよく見られますが、基本的にQuadroでゲームが動かないという事はありません。

OpenGLもDirectXもどちらも動きます。QuadroはVRAMを多く積んでおりより安定を目指した製品設計になっているようです。

ただし業務用VRに関して言うとQuadro P6000であれば動きますが、Quadro P4000でギリギリ、P2000以下では正直かなりパワーが厳しいかと思います。

QuadroRTXやNVIDIA RTX(Quadroの後継機)のシリーズであればVRも問題ないと思います。

同じLSIの場合、Geforceのほうが圧倒的にコスパがいいので新規での購入ならGeforceをおすすめします。

運搬性

業務用VR向けのPCはプレゼンテーションなどで使用する事が多いため通常のPCよりも持ち運ぶ頻度が上がります。

そのためPCケースはフルタワーサイズよりもMini-ATXやMicro-ATXサイズの物のほうがおすすめです。

さらにPCケースに取手がついているタイプだとより持ち運びが楽になるのでおすすめですが、小型のPCケースは冷却性能とは相反する事になりがちなので注意が必要です。

その他問題になるのが、PCの運送時の破損です。

重たいグラボが輸送時に外れてGPUとマザーボードを破壊する事があります。

空間の大きなPCケースの場合はグラボに突っ張り棒を後付けで設置する等の処置が必須です。

またCPUクーラーも非常に大きな物がついているため、クーラーがゆれる事でマザーボードとCPU自体が破壊される事があります。

これも突っ張り棒やワイヤーで固定しておく事をおすすめします。

まとめ

大手ゲーミングPCメーカー製のハイスペックゲーミングPC(30~40万円)を選択するのが最も簡単な方法ですが

スペックだけでなく筐体の運送等にも気をつける必要があります。(一般的なゲーミングPCは運搬の事は考えていません)

またCPUの在庫が切れる事はあまり聞きませんが、GPUは品薄になりがちで新製品が出ても値段が下がりにくいです。

GPUは新製品が発売されたタイミングが一番買い時な気がします。

毎年のようにCPUやGPUの新製品が発売されますが、VRの中で表現したい事もどんどん増えていくので

予算の許す限りハイスペックな物を購入していただくのが一番長く使えるPCになるかと思います。

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