RTXを活用したリアルタイムレイトレーシングでは何が変わる?

従来は現実的なCG表現を行うためにはCGモデルで作られた空間や対象を時間をかけてレンダリングする必要がありました。
3DCGを活用したビデオゲームなどは非常にクォリティの高いリアル調なものも多くありますし、CGを使った製造業や建築業における設計データのビジュアライズにおいてもゲームの様なリアルタイムのCGレンダリングによってリアルな表現が数多く行われてきました。

ですが、やはりこれらの従来のリアルタイム描画の手法は時間をかけてレンダリングする手法と比べると光の反射や表面質感による微妙な拡散など、多くの要素を省略したり疑似的に表現する必要があります。
その結果として、どうしても時間をかけるレンダリングにクォリティの点で劣ったり、精度の高いレンダリングを行う際には最終的な見栄えを考慮したしたうえで特殊な描画計算を行ったりしなければなりません。

従来のリアルタイム手法と組み合わせることで前述の弱点をカバーできるRTXを活用したリアルタイムレイトレーシングは様々な分野で活用が始まっています。
簡単なレンダリング例を見てどのような違いが出るのか確認していきましょう。

こちらは従来のレンダリング手法だけを使用してUE4で描画した画像です。

そしてこちらは同じカットでRTXを活用したリアルタイムレイトレーシングを組み合わせたものです。

非レイトレーシングのカットでの「映り込み」の表現は事前にシーン内で撮影されたパノラマ画像をもとに作成される疑似的なものと、画面内に存在するオブジェクトを画像処理で映り込みの様に加工して描画された疑似的な映り込みです。
レイトレーシングを活用したカットではヤカンなどに映り込む部屋の中の様子がより詳細になり、映り込む位置なども正確になっています。
また、半透明描画ゆえに寄りで見るとCG感が強まっていたなビンや、黒潰れしてしまっていたパンケーキに添えられたベリーなど、浮いているような印象を受けるオブジェクトもありましたがそれらも立体感がよりくっきりして実在感があります。
全体として明るい場所は正しく明るく、暗くなるべき場所は正しく暗くなりました。細かなオブジェクトが入り組んで前後関係が分かりにくくなるようなカットで効果が出た例といえるかと思います。

また別のカットの画像です。

こちらは従来のレンダリング手法だけを使用してUE4で描画した画像です。

そしてこちらは同じカットでRTXを活用したリアルタイムレイトレーシングを組み合わせたものです。

中央の箪笥の天板部分へ落ちる陰影が従来のレンダリングでは平坦に見える質感だったのに対し、リアルタイムレイトレーシングを活用したものは周囲の環境の影響を受けてかなり自然な形になっていると思います。
天板の上に載っている小物もより設置感が強くなって実在感があります。
右に見えるテレビや奥のガラス戸へ部屋の向かい側が映り込んでいます。こういった表現を正確に行うにはリアルタイムレイトレーシングは強力な効果があります。
全体としてくっきりしつつもカットの色調や陰影のまとまりがより強くなりました。

あくまで現状のリアルタイムレイトレーシングは従来のレンダリング手法と組み合わせて使うという手法にとどまっています。
まだまだマシンスペックの限界などもあり、全ての表現を精度の高い計算で描画することはできませんが、必要に応じて効果を取捨選択することでレンダリングのクォリティを1ランク上にアップさせることができます。

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